僕は性格が悪いけれど、価値のあるヒール役になれるだろうか

久しぶりの2連休を満喫し、意気揚々と出勤。今日は雨が降るらしいけれど、なんだ、すごくいい天気じゃないか。

自転車を快走させ、いつもより2分程早く出勤。荷物を置こうとするやいなや、不意にオーナーに声をかけられた。

「嶽ちゃん。土曜日さ、F井何やっとった?」

(おぉ、それを聞いてくるってことは・・・あ~~~、これはアカンやつ。)

一瞬のうちに様々な事が脳内を駆け巡った。どう答えるべきか。色んな選択肢があるぞ。どうしよう。何を重んじる。今僕が発する言葉によってF井の評価が+にも-にもなるだろう。角を立てず無難にやり過ごすなら、適当に当日の状況や過程を含めながらこう話せばいいだろう。

「いやぁ~、あの日はかなり忙しかったですからね~。まあアイツなりに頑張ってはいたんじゃないですか?」

いやいやいや、そんなこと言って何の意味がある。別にアイツに配慮する義理も無いし、ってか俺そんなキャラじゃないし。そもそもそれでオーナーが満足するか?オーナーが聞きたいのはあの日の深夜の状況だ。その状況下でのF井の仕事ぶりだ。

だったら僕の主観は交えず、客観的な視点から結果だけを伝えるべきか。だったら・・・こうかな?

「F井は・・・、あちこちウロウロしてましたね。」

これでも良いだろう。これでも十分伝わるし、オーナーも納得する。「やっぱりか」と。

でもこれじゃあ面白くない。僕が面白くない。あの日僕は、ひとつだけイラッッッとしたけど飲み込んだことがある。それを今ここで吐き出したい!!!!

「余った飯食ってましたよ。」

言ったあああああ!!!悪意のある言葉あああああ!!!!!

これね。ちょっと反省してます。だってこんなこと、言う必要ないじゃないですか。ちょっと口汚く言うのなら「馬鹿みたいに効率の悪い方法で仕事してました。アイツまじでバカ過ぎます。」で良いじゃん。それなのにね、色んな事がわかっていながらのこの回答は我ながら嫌な奴だと思う。

まぁ嘘は付いていないのだけれど・・・。結局は自分の思った事、自分の気持ちや意思を優先させてしまうんだなぁ。そのこと自体は全く悪いことでは無いと思うけれど、こういう場面でこんな事言っちゃうのは悪い癖なのだろう。

反省の意味も込めて、この出来事にまつわる事を振り返ってみようと思う。

 

土曜日、僕は開店から閉店まで働き続けた。フルタイムシフトだ。疲れは溜まるが、労働時間が8時間を超えれば給料が割り増しされるし、10時を過ぎればさらに深夜手当も貰えるから、効率の良いシフトとも言える。

と自分に言い聞かせてモチベを保つが、やっぱり疲れているのに働き続けるのはしんどい。しんどいんだ。早く帰りたい。帰りたいんだ。だからなるべく早く終わりたいし、終わらせようと仕事を進める。

とはいえ、深夜の営業にたくさんの人間はいらない。オーダーが入れば商品を作って配達までするが、基本は洗い物や掃除など、店の片付けがメインだ。ある程度作業の目処が立てば売上金や在庫の管理業務を行って終了。やる事は多いが手分けをすれば負担は大きくない。最低3人いればそこまで大変な思いをせずに済む・・・ハズだった。

3人いれば事足りる。多くの場合はそうなのだが、これは3人共に手際よく作業を進めた場合だ。出来ないヤツが1人でもいるとその分他の人に負担がのしかかる。そう、閉店作業はメンツがとっても大事なのだ。

僕は洗い物で、もう1人のM浦が掃除、そしてF井が売上金や在庫管理などの事務作業といった分担だ。

F井はここまででお察しの通り、要領が悪く仕事が遅い。オーナーもそれがわかっていたから、可能な限り事務作業を終わらせてから店を後にした。大体閉店の1時間前ぐらいだった。

しかしこの日は閉店間際までオーダーが入り続け、僕もM浦も配達に出ずっぱり。ほとんど閉店作業も出来ないまま時間が過ぎていき、ようやく作業に本腰を入れられたのが閉店30分後だ。

「あぁ、やっと落ち着いた。もう早く帰りたい。とっとと終わらせよう。」

と思って店内に入ると、F井が飯を食っていた。余っていた物を焼いたのだろう。僕は目を疑った。驚きを通り越して呆れるとはこの事か。なんて浅はかなヤツなんだ。今の状況を考えず、周囲を慮ることもしないのだろう。この馬鹿女が。食ってる暇があったらさっさと仕事を終わらせろ。というか勝手に余ったの焼いたのM浦だろどうせ。コイツも相当な馬鹿だからな。馬鹿と仕事してると本当に疲れるわ。嫌になるわマジで。

別に余った商品を食べるのは良いのだ。どうせ捨てるのだから、だったら誰かが食べた方が良い。でもそれは仕事が終わってからにしろよ。そんなことも考えられないなら家畜以下だぞ。まだ「待て」が出来る犬の方が偉いわ。百歩譲って勤務中に食うとしても、まあ営業時間外だから良い。でも食った分生産性を上げて仕事しろよ。お前はそもそも効率の悪い仕事で周りの足を引っ張っているんだから食う資格すら無いぞ。わかってんのか。

こんなことを心の中で唱えつつ、ふつふつと沸き上がる怒りに左目の下がピクピクしていた。これはさすがに言ってやろうと思ったが、疲れているせいかもうどうでもいいやと口をつぐんでしまった。後になって、「なんで俺が我慢してるんだろ、別にアイツらに気を遣う必要なんて無い。言えば良いのに。言った方が良いのに。」と葛藤もした。

そうして今さらオーナーにチクる僕。本人に言わずしてここぞとばかりにオーナーに伝える僕。僕も大概ゴミ野郎だ。反省します。

 

イライラしながらも閉店作業は程なくして終わった。閉店後1時間過ぎには僕もM浦も帰る支度を始めた。「お疲れ」と言って事務室のF井を見ると、彼女はパソコンとにらめっこをしていた。

「あー、これはまだまだかかりそうだ。」と察したが、自分の仕事は終わってるし帰りたかったから帰ることにした。その30分後に事件は起こった。F井がオーナーに在庫入力の件で電話をしたのだ。

おっっっそい!!嘘だろ、まだ終わっとらんのか・・・。

普通にやっていればこんなに遅くまでかからないはず。オーナーは半分以上の事務仕事をして帰ったにも関わらずこの進捗状況。理解不能。お前は何をやっていたのだ。ということでオーナーは僕に尋ねたのだ。「土曜日さ、F井何やっとった?」と。

僕は即座に理解した。オーナーがこうやって聞いてくるってことは。多分F井が夜中遅くにわからないところを教えてもらおうとオーナーに電話したのだろうと。あまりにも仕事が遅いから、一体何をやっていたのかと。どういう具合で仕事をしていたのか。それを聞きたいのだろうと。

分かっていたのに僕はこう答えたのだ。「余った飯食ってましたよ。」うーん、僕って性格悪い☆

それに対してオーナーは「アイツ・・・」と奥歯をグッと噛み締めて言葉を捻り出していた。いけない。またオーナーの奥歯が砕けて腫れ上がってしまう。

「やー、僕もイラッとしたんですけど、何も言う気になれませんでした。」とのたまうと、「いや言えよ」と吐くように返されてしまった。

オーナーは僕にはあまり強くものを言わないのだけれど、この一言だけは違った。癪に触るようなことを言ったことを反省した瞬間だった。

 

僕はオーナーに期待されている。

新人に仕事を教える事や、仕事の効率が悪いヤツに効率の良い方法を教える事は、ある程度経験を積めば多くの人ができるようになる。

でも僕はそれ以上の事、すなわち部下の人間性を高めることを期待されている、ように思う。

だからF井がモグモグしている瞬間に居合わせていたにも関わらず、疲れを理由に僕が何も言わなかった事に失望のような物を感じたのかもしれない。

F井の仕事が遅いことなんてオーナーもはじめから分かっているのだから、夜中遅くに電話されるのは迷惑だと思いつつも「やっぱり来たか」ぐらいには覚悟を決めているだろう。

しかし自分の立場や周りの状況を考えず、食欲の赴くままに飯を食らうというのは、仕事に対する意識が欠如しているし、端的に言えばクズのやる事だ。オーナーとしても、そこはやっぱり容認し難いものなのだろう。

 

もし僕がオーナーだったら、多少口うるさくても「間違っているものは間違っている」と主張する人がひとりくらい居た方が助かると思う。それによって従業員のモラルが改善されるならもの凄くありがたい存在だ。

オーナーは僕にそのポジションになって欲しいと思っているのだろうか。嫌われ役をやるのは別に良いのだけれど、むしろ今もちょっと嫌われてるし、やっぱり胃がキリキリするのは嫌だ。

しかし間違っているヤツらをのさばらせておくのも目障りだし、少しずつ変えていかなきゃいけないとも思っている。とりあえずF井。お前には言うわ。

今後もF井の話は尽きることがなさそうです。

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